カエルになるまで、田んぼの水を抜かない。

写真:Samchan91 / Toyooka City Oriental White Stork / CC BY-SA 4.0 / 原典。既存のCommons配信縮小版を再利用。色調変更・追加トリミング・文字の焼き込みなし。
田んぼを乾かす日を、カエルの成長に合わせる。兵庫県豊岡市の「コウノトリ育む農法」では、オタマジャクシがカエルに変わったことを確かめてから、中干しを行う。通常よりおよそ3週間遅い。
鳥の餌になる生きものが育つ場所を残すためだ。2006年に農家を取材した新聞「農民」も、カエルになるまでの中干し延期や、ドジョウ、フナが生き延びるよう冬も水を張る作業を伝えている。
2005年、豊岡で最初の5羽が野外へ放たれた。放鳥や自然繁殖を重ね、県立コウノトリの郷公園が2025年8月に公表した野外個体数は、全国で500羽超。鳥を増やす取り組みと並んで、餌のいる田んぼを育てる仕事も続いてきた。
田んぼに水がある期間を長くする
豊岡市は、この農法を2003年度から進めている。特徴は、米を育てる時期だけでなく、冬も水を張る「冬期湛水」や、田植えの約1か月前から水を入れる「早期湛水」を組み合わせることだ。ほぼ一年を通して水のある場所をつくり、コウノトリの餌になる生きものを育てる。6月下旬から7月上旬の中干しも、オタマジャクシに足が生え、カエルへ変わったのを確かめてから行う。
田植えの後には、水深をおよそ8センチに保つ深水管理も行う。農薬を使わないため、6月の除草には手間がかかると市は記す。中干しは稲を育てるために水を抜く通常の工程だが、ここでは生きものが育つ時間を見込んで約3週間遅らせる。7月には、田んぼにいる生きものの種類や数を調べる機会もある。
鳥だけで終わらない野生復帰
日本の野外からコウノトリがいったん姿を消したのは1971年。兵庫県は2005年に5羽を初めて放鳥し、県立コウノトリの郷公園は20年後の2025年、野外個体数が500羽を超え、生息域が全国へ広がったと発表した。放鳥だけで数が増えたと決めつけることはできないが、田んぼの水管理、餌になる生きもの、繁殖を支える取り組みが、別々ではなく続いている。2006年の農家取材にも、中干し延期と冬季湛水の実践が記録されている。
農民連の2006年の記事では、豊岡エコファーマーズの農家が、米ぬかやくず豆を使う除草とともに、中干し延期や冬季湛水を行っていたと伝えている。過去の取材と現在の市の説明を並べると、田んぼの水をいつ残すかという工夫が、一時的な企画ではなく、長く積み重ねられてきたことが分かる。
元記事・発表
もう一つ、世界の話を。
鳥たちの移動と、それを支える場所の話。