奈良の墨づくりは、涼しくなる秋から始まります。

写真:Ph0kin / Japanese Calligraphy Inksticks.jpg / CC BY-SA 3.0 / 原典。1280px以内のJPEGへ縮小。EXIF、XMP、GPSを除去。色調変更・追加トリミング・文字の焼き込みなし。
書道で使う固い墨は、煤を集めて押し固めるだけでできるのでしょうか。奈良の墨は、煤と膠を混ぜ、練り、型に入れ、乾かして作ります。奈良県の紹介では、製造期は毎年10月中旬から翌年4月末。秋に涼しくなることには、原料の膠が高温多湿の夏に腐りやすいという理由があります。奈良製墨組合の工程紹介は、膠の役目と、形を作る木型にも目を向けています。秋から春へ、材料を練る季節と、ゆっくり乾かす工程の先に、手のひらに載る一本の墨があります。
煤をつなぎ、紙へ定着させる
膠は、動物の皮や骨などに由来するゼラチンを固めた原料です。奈良製墨組合は、膠が煤の粒子を固め、紙へ定着させる役割を持つと説明しています。
膠を湯煎でゆっくり溶かし、煤と混ぜて練ります。暑く湿った夏は膠が腐りやすいため、寒い時期に製造します。墨の黒さだけでなく、粒をつなぐ材料の性質が、作る季節にも関わっています。
木型の準備も、一本の形を支える
練った材料は木型へ入れ、形を整え、乾燥し、磨きや彩色へ進みます。木型には、長く乾かしたナシやビワの材が使われると組合は紹介しています。
同じ黒い固形物に見えても、材料を混ぜる仕事と、形を付ける仕事、乾燥して仕上げる仕事は別の段階です。掲載した書道用の墨は、奈良産と確認した製品や、今年の製造現場ではありません。秋に始まる墨づくりは、煤を紙の上へ渡すために、原料の状態と形を一つずつ整える仕事です。
元記事・発表
もう一つ、世界の話を。
身近な素材を変える、職人の工夫です。